マッチングアプリを始めたと口にした途端、同年代の知人たちは判で押したようにこう反応する。
ああ、いわゆる出会い系ってやつか。お前も好きだねえ。
無知とは罪である。 訂正させてくれ。その認識は、基礎工事もしていないバラック小屋と、最新の耐震構造を備えたタワーマンションの違いも分からずに住居を選ぶようなものだ。
確かに画面の中で男女が出会うという外観は似ているかもしれない。 だがその中身、すなわち基礎構造と法的根拠は天と地ほど違う。
私がなぜ、旧来の怪しい出会い系サイトではなく、あえてマッチングアプリという市場を選んだのか。 そこには建築家として譲れない決定的な構造的理由がある。
これは単なる好みの問題ではない。 50代が人生の後半戦で致命傷を負わないための、必須の安全設計なのだ。
今日はその明確な違いについて、感情論抜きで解説しよう。
法規制という建築確認済証の有無
まず第一に、セキュリティの土台が根本的に異なることを理解してほしい。
無法地帯だったかつての出会い系
かつての出会い系サイトは、誰が住んでいるか分からないスラム街のようなものだった。
サクラ、業者、援助交際。 そこには法規制の網をかいくぐる、無法地帯特有の混沌があったのが事実だ。 リスク管理もなにもあったものではない。
インターネット異性紹介事業という保証
対して現代の主要なマッチングアプリは、インターネット異性紹介事業として警察庁への届け出が義務付けられている。 これは建築で言えば、建築確認申請が正規に降りている物件だということだ。
行政の厳格な監視下にあり、違法な運営を行えば即座に業務停止命令が下る。 この法的拘束力の有無こそが、最大の安心材料となる。
56歳にもなって、いつ倒壊するか分からない違法建築に足を踏み入れるほど、私は愚かではない。 法に守られた場所で探すこと。これが大人の最低限のリスク管理だ。
従量課金と定額制の経済的構造
次に、料金体系の違いだ。 これがユーザーの質に直結する決定打となる。
ポイント制に潜む構造的欠陥
旧来の出会い系サイトの多くは、ポイント制を採用している。 メール1通送信するのに50円、画像を閲覧するのに100円といった具合だ。
これは利用した分だけ払うという意味で一見公平に見える。 しかしここには構造的な欠陥がある。
運営側、あるいはサクラにとって、いかにメールを長引かせてポイントを消費させるかが利益の源泉になるからだ。 これでは、いつまで経っても会えないまま資産を搾取される未完成物件に投資し続けることになる。
サブスクリプションによる合理的選別
一方、私が選んだマッチングアプリは、月額定額制だ。 月々4000円程度を払えば、メールもし放題、検索もし放題である。
ここでは、メールを引き伸ばすことに経済的なメリットは発生しない。 むしろ、さっさと会って退会したほうが、ユーザーにとってはコストパフォーマンスが良い。
さらに重要なのは、ここには家賃によるフィルタリング効果が働いている点だ。 毎月安くない固定費を払える経済力があり、かつ真剣にパートナーを探している層しか残らない。
冷やかしや遊び半分の貧弱な層は、この固定費の壁を超えられない。 結果として、民度の高いコミュニティが維持される。実に論理的だ。
身分証提示によるオートロック機能
アプリへの登録には、運転免許証やマイナンバーカードによる公的な本人確認が必須となる。 これを面倒くさいと言う人間もいるが、思考が浅い。
エントランスでの厳格なスクリーニング
逆だ。 身分証も出せないような怪しい人間を、エントランスの時点でシャットアウトしてくれるオートロックシステムだと考えるべきだ。
未成年や、身元を隠したい既婚者、あるいは詐欺目的の業者が入り込む隙間を、運営側が埋めてくれている。
プライベート空間の安売りはしない
私は、身元の知れない人間に開放するほど、自分のプライベート空間を安売りするつもりはない。
この厳格なスクリーニングこそが、住人の質を担保するのだ。 誰でも入れる公園で寝泊まりするか、セキュリティの効いたマンションに住むか。 答えは明白だろう。
目的のゾーニングが明確であること
都市計画において、住宅地と商業地を明確に分けるように、アプリは目的によって厳格にゾーニングされている。
商業地域としての無料アプリ
無料のアプリなどは、いわば繁華街の商業地域だ。 遊び目的の人間が徘徊し、ノイズが多い。 そこで真剣なパートナーを探すのは、パチンコ屋の中で読書をしようとするようなものだ。
第一種低層住居専用地域としての婚活アプリ
対して、私が利用している婚活や恋活に特化したアプリは、第一種低層住居専用地域だ。 静謐で、治安が良く、将来を見据えた人間が集まる。
旧来の出会い系は、これらがごちゃ混ぜになった雑居ビルだった。 しかし現代のアプリ市場では、自分の目的に合わせたエリアを自ら選定できる。
私が選んだのは、当然ながら静かで落ち着いた婚活エリアだ。 ここで騒がしい若者たちと遭遇する確率は、極めて低い。
自分の属性に合った土地を選ぶこと。 これは不動産選びの鉄則であり、パートナー選びにおいても同様である。
地方在住者にとっての監視システム
最後に、私が住む香川県のような地方特有のリスクについても触れておこう。 それは、業者やサクラ以上に厄介な、知人による身バレや噂話というリスクだ。
24時間体制による防犯カメラ
大手アプリには、24時間365日の有人監視体制が敷かれている。 不審なユーザーや、嫌がらせ、誹謗中傷を行うユーザーは、通報機能によって即座に強制退会させられる。
この管理体制は、古い因習が残る地方において、個人の尊厳を守るための防波堤となる。
デジタルによる断熱施工
また、特定の機能を駆使すれば、リアルの友人を自動的にブロックする仕組みも存在する。
プライバシーという断熱材がしっかり施工されているからこそ、地方の人間でも安心して市場に参入できるのだ。 田舎だからこそ、デジタルの匿名性は最大の武器になる。
結論 欲望ではなく投資のリスクヘッジ
私がアプリをやっていると言うと、女好きだと揶揄する輩がいるかもしれない。 だが、ここまで読めば分かるはずだ。
これは欲望の話ではない。 安全性と効率への投資なのだ。
参入障壁を下げる3つの条件
法的に守られた強固な地盤。 定額制による明朗な会計システム。 目的の一致した良質なユーザー層。
これだけの条件が揃っているなら、56歳の建築家が市場に参入するハードルは限りなく低い。 いわゆる出会い系で消耗するのは非論理的だが、アプリという完成された構造を利用するのは、現代において最もスマートな選択肢の一つだ。
アナログな出会いに固執して、いつ現れるか分からない偶然を待つのか。 それとも論理的に構築されたプラットフォームで、確実な一歩を踏み出すのか。
私は後者を選んだ。ただそれだけのことだ。
さて、現場の安全確認は済んだ。 次はいよいよ、この堅牢なシステムの中で、私がどのような設計図を描き、どのような戦略で相手を見極めていくのか。
アプリで安全かつ論理的に相手を探して、何か悪いか。